手描き友禅/付け下げ地

白木周生 -雅楽-


雅楽、、。　それは古来大陸から渡来し今日に至るまで継承されている音楽。つまり「雅正の楽」をその意とし、国家の荘厳（しょうごん）をなすために用いられるものとされています。　民衆の間で親しまれる音楽を「俗楽」と明確に区別し、宮廷・寺社の儀礼・祭礼における正式な音楽と位置付けられているようです。　雅楽に用いられる楽器は吹物（ふきもの）・弾物（ひきもの）・打物（うちもの）に大別されます。　雅楽の合奏に舞いを伴うものを舞楽と称するようですが、雅楽/舞楽ともに相当に奥が深く、私のような浅学ものにはそれらを語る資格はありません。　ちなみにオーケストラの和訳である管弦楽団も雅楽における管楽器絃楽器が由来しているとの説もあるようです。　


さてこちら。。。　雅楽の楽器をモチーフとして描きあげられた付け下げとなります。　格式と緊張感の保たれた、言わば品位の在る柄ゆきなのですが、あえて古代縮緬を用いることで　荘厳な印象を抑え、柔らかな印象となっています。　もし、紋意匠縮緬に　この柄ゆきが描かれたならば　その印象はどうだったのでしょう。　おそらく硬い、形式美を醸しだすだけの印象となったのではないかと思います。　この制作者は古代縮緬そのものが保つ柔らかさを友禅に取り込むことを予め想定していたのだと思います。　つまり、友禅の文様の輪郭をはっきりとさせにくい　オウトツの有る生地の性質を巧みに利用し、女性の優美な装いをより印象強く求めたかったのではないでしょうか。　そうした技量の巧みさがこの友禅から感じられるのです。　礼装としての着物という印象に留まるだけでない、女性ならでは柔らかな「礼」の意識、そんな優雅なる「礼」を想わせてくれる付け下げではないでしょうか。　極めて秀逸な友禅だと思います。