叙事百選集
叙事百選集/琉球染織一首里花織2012年5/3(木)
叙事/その本来の意は事実をありのままに述べ記すこと。また、述べ記したものです。 |
首里花織
祈りの籠められた紋様
想いを秘めた紋様・・そして美ら色
琉球染織における首里花織…/
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15世紀初頭から19世紀にまで及ぶ琉球王朝時代、沖縄は中国や東南アジアをはじめとする、諸外国との貿易や交流を盛んにすゝめ、沖縄独自の文化を発展させるにいたりました。その恵まれた南国特有の気候風土を生かし、また琉球独自の素材を生かし、本土では見られないエキゾチックな色彩美や織物の技術を発展させてきました。
染織の宝庫とも云われる琉球沖縄、昨今では”極めて高価な布”となり、手の届かない布になってしまった芭蕉布も言うに及ばず、そもそも多くの琉球染織は異国文化の混在する土着的なものであった訳です。つまりは沖縄の亜熱帯気候の風土の中で必然的に自然派生した島人達の日常着が琉球染織の源/ルーツなのです。
強く眩しい南国の陽光、受け継がれる風習と風土、そこに感じられるすべては南国琉球固有のものであると言えるかもしれません。 とりわけ首里は琉球文化の中心と言う自負が在るように思います。 染織はもとより、人々が暮らす町並み、家々の屋根瓦、日本語とは異なる言語、風土、風習、慣習、琉歌、音楽、舞踏、琉装・・・etc 工藝、芸能、文学、様々なものが私たちが住む本土とは異なる魅力を見せる琉球沖縄。
こうして琉球の染織を眺めているとそこには南国特有と言えるようなエキゾチックな薫りが色濃く籠められているように思います。とりわけ首里の織物は日本とはまったく異なる琉球と言う異国情緒そのもののようにも感じられます。他の花織には決して見ることの出来ない首里固有の色彩美を呈しているのです。
その琉球を代表する染織の一つに花織があります。
花織… 花織とは沖縄における「紋織物」の総称で、掲載の首里花織以外にも「与那国花織」や「南風原花織」・「読谷山花織」などがあります。 絹糸/綿糸をアカリファ・琉球藍・福木・モモカワ・サルトリイバラ・シャリンバイ等の天然染料で染め、その多彩多様な色彩の花糸を使用して平面的な生地に柄を浮き出させるように織り上げるものが「花織」といわれる技法です。
それらは一見すると細やかな刺繍のようにも見える繊細な魅力を保っており、一般的な花織技法は、必要な花糸を足踏みによって糸を浮き沈みさせる「花綜絖」と呼ばれる織機にかけて織り上げられます。
さて、その首里の花織ですが、どこかしら他の花織とは違った表情を保つように感じます。琉球王府の献上品を制作を司っていたことに起因するのでしょうか?、とりわけて琉球色が強く表れているようにも感じるのです。(私感に留まるものかもしれませんが)
読谷も南風原も、もちろん与那国も、琉球の織物特有の表情が感じられるのですが、それは首里の花織から感じられる品位のようなものではなく、言うなれば郷土色という民芸的な印象、土地を強く感じさせるものなのです。
民が民の為に染め、個が個の為に織る、民の生活に根ざし、民の心情が織り込まれ、民の想いが交差する染織、のように感じられるのです。風土と暮らしの織物なのだと思います。もちろん首里にもそうした側面がないとは思いません。唯、やはり受ける印象には違いが有るように思うのです。
それはやはり色遣いでしょうか・・たとえば紋様の美しさを一層際立たせるかのような彩色、他の琉球染織とは確実に一線を画す色遣い・・王族や上級士族にしか許されなかった色が今も尚遣われていること等、特有の品位を想わせているように思います。王朝王府が解体された現代においてもなんとなくそんな名残が感じられるのです。
東南アジア諸国から伝わった絣の文様が南国特有の風土や気候と相俟って生まれた文様美・・ 沖縄の自然に彩られた色彩美や素材感・・ 琉球固有の美しさを感じるのは、沖縄の、琉球の歴史、琉球民族のアイデンティティがその染織に強く息づいているからなのかもしれません。 現代では産業化が図られ、琉球らしさが薄められた感の有る琉球の染織ですが、こうした半幅帯にこそ、琉球らしさ、が残されているように感じるのは私だけではないかもしれません。
もう十年程になるでしょうか・・ 琉球の染織に向けられた世上の熱も一段落し、落ち着きを見せています。雨後の何やらの様にあちらこちらから姿を現した琉球染織もどきも、質の量れない少数を除き目にすることも少なくなりました。残るのはやはり本物だけなのです。まさに”虚剥がれ落ち、真実そこに残りけり”、ですね。
掲載画像は首里を強く想わせる首里花織の四寸帯(半巾帯)です。いかにも首里の織物らしい空気が薫ります。HPには掲載されておりませんが、¥27,200で販売しております。お問い合わせお待ちしております。