【有松絞り】
鹿の子絞り


そもそも絞り染めとは、布を「括る」「縫う」「締める」などの加工をすることで模様を染め上げるものです。　こうした絞り染めと言うものは機械によるものではなく、そのほとんどすべてが「ひと」の「手」つまり指先でするものです。　ですから同じ柄でもすべてその「ひと」の指先の感覚によって模様が微妙に変化する・・　つまり同じ「ひと」が同じような絞りを試みても同じものは出来ないのです。
もちろん計算して括り、染めているんですが、解いてみると予期せぬところに染料が滲む・・　でもそれも絞りの面白みでもあるのです。　言わば「偶然の美」とでも言えるのでしょう。　つまり…「二度と出会う事のない文様」と「偶然の滲み」がひとの心を魅了し惹きつけるのかもしれません。

深い藍色、鉄紺色にて表現されたこちらの有松絞り。　ひと目絞りと疋田絞りで表現された林檎と蝶々の意匠がとても可愛いですね。　有色にせず、単色に留め置いたことで、可愛い意匠ながら、子どもっぽくはならず、大人の可愛さや風情が感じられ、とても素敵ではないでしょうか。　こうした色彩感覚はあくまでも「好み」によるもので、優劣を付けるものではありません。　唯、「浴衣」としてお召し頂く際、藍色で染められた有松絞りはとりわけ美しく、個人的にも一番好きな色目でもあります。　どの有松絞りが良いか・・　お好み次第、ですね。