【綿さつま】
微塵格子/墨色
制作/東郷織物

薩摩絣と言う名称は古い文献などにも見る事が出来ますが、それらは現在の綿薩摩とは異なり　当時の薩摩藩の絣織物の総称で、また染織そのものも薩摩で織られたものはなく　統治したとされる琉球や奄美地方で織られていたようです。　また、その素材も現代の綿薩摩/薩摩絣に使われる木綿ではなく　麻を中心とした織物で　いわゆる現在の「琉球絣」や「上布」がそれらにあたるのだと思います。


さて、こちらに掲載させて頂きました綿薩摩、木綿の織物の中で最も精緻な「織り」によって織り上げられる「綿薩摩」。　その機（はた）の源は締機（しめばた）である大島紬の機となるのですが　極細の綿糸によって織り上がるその質感は大島紬とは異なる特有の「織」の表情を携えています。　その風合いから「木綿の宝石」とも賞されるその質感は絹織物では表現する事のかなわない固有の「しなやかさ」や「温かみ」を感じさせてくれます。　この綿薩摩は現在　永江明夫氏による「東郷織物」においてのみ織られております。　そのため、そのクオリティは高く１反１反丁寧に織り上げられ　量産はされておりません。（※永江氏は量産にはまったく関心を持っておられず、あくまでも品質が保たれる範囲の生産に拘っておられます。）素敵な志かと思います。


こちら、画像では、無地に見えるかも知れませんが　極めて細やかな「微塵格子」にて織られています。　この細やかな微塵格子は実際に着物としてお仕立がなされた際に生地自体の深みとなって「上質な織物」としての質感を感じさせてくれます。　お色目は墨色です。　いわゆる黒とはニュアンスが異なります。　参考イメージとして荒川眞理子氏の型絵染「葉っぱ」、山型絣が美しい伊那紬を適わせてみました。　綿織物だからと言ってカジュアルにドレスダウンを意識するばかりではなく　こうした綿薩摩のような上質な綿織物は　むしろ大島紬や結城紬などの絹織物と同様な帯適わせをすることで　より一層魅力を引き出せるのではないでしょうか。

こちら、手に取りますとわかりますが“とろりとした質感”はいつまでも触れていたくなるような上質さです。　きっと想像される木綿の質感とはまったく異なるものかと思います。　ところで、、　こうした無地織感覚の綿織物の撮影でいつも悩まされるのが色の質感です。　デジタルカメラでは実際の色の表情を拾い難いため、写す角度や時間で黒に見えたりもしているかと思いますが、いわゆる墨色です。　黒とは異なり無機質な感じはございません。