平穏な日は
真つ白な
古日記
小倉正穂
末黒野
【描疋田に刺繍/九名古屋帯】
―隅取り色紙に源氏香―
もっとりと手に馴染む塩瀬地に隅取り色紙に源氏香が江戸解き文様が友禅と刺繍によって表現された名古屋帯。 昨今流行りの表現で記せばグレージュでしょうか。 もちろんベージュでもグレーでもない、和名で記せば「亜麻色」にほんの少し「空五倍子色 」を溶け込ませたような、が近い。 その地色に描疋田模様が白抜きで置かれ、空蝉、花散里、乙女の源氏香が極めて丁寧な刺繡であしらわれている。 源氏香とは平安貴族の間で流行した香合わせの遊びにちなんだもの、後水尾天皇(ごみずのおてんのう)の時代に遊ばれた組香で、五つの香りを五包ずつ二十五包作り、香元が任意に五包ずつとって香を焚き、香を嗅ぎ分け、相異を五本の線で示す遊び。 同じ香を線で繋ぎ香の相異を当てるというもの。 異なる香だと思う場合それぞれの線は独立した形となり繋ぎません。 源氏香は五本の線の組み合わせによって出来る五十二の形を源氏物語の各巻に当て嵌めたもののこと、幾何学的な形が、古典紋様の雅な趣を想わせるのはその歴史にあるのかも知れない。
それにしても美しい作品です。 どれだけ眺めていても本当に美しいと感じます。 画像からもお分かり頂けるように、地染めの美しさも特徴的です。 一言で何色、と表現しえない美しさを創出している。 押し出しの強い色目ではないけれど、差し控えていると言う色ではない。 雅ではあるけれど煌びやかではない。 ほとんど彩色を加えないことで文様の持つ美しさを最大限に見せている。 もちろんそれは完璧なバランスに自信があるからこそ、成せる表現です。 彩色は源氏香の刺繍に使われた僅かなものに留め置かれている。 刺繍がかように美しいことは論を俟たない。 ご覧頂ける通りです。 でも、やはりこのあえて彩色を控えた完璧なバランスの美しさに惹かれてしまうのです。
地色はこうした染め帯の魅力を司る要素として極めて重要で、染め帯に限って言えば地色の魅力が帯の魅力だと言ってしまっても言い過ぎではない、と思えるほどに重要な要素です。 唯単純に薄茶色であるとか、灰茶色であるとか、一言では表現できない色。 そしてそれは吟味に吟味を重ね、何度も何度も色が調合され創られる。 眺めていればいるほど、描かれた文様の由来や出典が、さほど大きな意味があるようには思えなくなってしまう程。 美しさとは本来そうしたものだと思います。 方途を尽くし、難しい言葉を並べたところに美しさが在る訳ではなく、本質に美しさをもたないものは、やはり美しいとは感じられないのです。 つまり・・・言葉など添えられていなくても、美しさを秘めた作品は唯そこに在るだけで美しいのです。
※こちらの帯は、色無地や江戸小紋、軽い附下などに合わせて頂きますととても素敵なのですが、無地感覚の結城や大島などのカジュアルなお着物に適わせて頂きましてもよろしいかと思います。 小物を変えるだけ、、感性でお使い頂ければ、と思います。
商品番号 |
TGU-KWK-1 |
商品名 |
描疋田に刺繍の九寸名古屋帯/隅取り色紙に源氏香 |
品質 |
絹100% |
価格 |
¥153,000(帯地のみ仕立て無し/税込) ¥164,500 (芯仕立て上げ税込) ※一級和裁士による手縫い。 ※お仕立てに要する日数はご注文確定後 約2週間~20日戴いております。 |
巾/ 長さ |
八寸~八寸一分程/ 九尺八寸程※お仕立て上がりの際のサイズ |
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