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叙事百選集/型絵染2012年11/17(土)

叙事/その本来の意は事実をありのままに述べ記すこと。また、述べ記したものです。
つまり、主観や論評を避けて事実のみをそのままに述べることを主とする文となります…筈です。
でも、所詮私の書き物です。曇り眼鏡と浅薄な人間性による、偏見と曲解が顔を覗かせます。(笑)
弛緩した私感が時折織り交ざることも少なくありません。ご理解の上お読みくださればと思います。

季・とき折々…

型絵染/下平清人

彩色を重ね、型紙を重ねることによって

生み出される積層の染色美
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型絵染、なんて聞くと「なんだ、手描きではないの?、じゃあ安物ね」と、少しばかり誤解をされている方もいるかもしれません。「型絵染/KATAEZOME」とは下絵に沿って文様を彫った「型紙/KATAGAMI」を使い絹布や綿布、或いは和紙などに防染糊を置き、刷毛を用いて引染めを施す染色技法です。(※染液に浸し、「浸染」後に水洗いして防染糊を落とし文様を染め出すものも有ります。)染色における彩色の数によっては数十枚もの型紙を使って染められるものもあり、そうしたものは並みの手描き友禅よりも高価なことも多いのです。


型絵染と言う呼称そのものは1956年に芹沢げ雹瓩侶神技法が重要無形文化財に認定された際、同じ型染めである江戸小紋や長板中形などの型染技法と区別するために用いられたようです。同じく国の重要無形文化財に認定されている江戸小紋は板場に置かれた長い一枚板に張られた布地の上を型紙を正確に送りながら糊を置き、その後刷毛で引き染めを施し染めていきます。極と称される極めて細密な文様をすっきりと染め上げることが重要なのに対し、芹沢げ雹瓩寮め作品は紅型を基礎としたもので絵画性に富む型染であることからそのように命名されたようです。


文献によると…「芹沢げ陝很声F鷭夙年、静岡市に生まれる。生家は呉服商。東京高等工業学校(現・東京工業大学)で図案を学び、民芸運動の父と云われる美術評論家、柳宗悦(やなぎむねよし)らと交流し「民藝運動」の主要な担い手となる。着物・帯・屏風・暖簾といった日本の伝統文化にかかわるものにとどまらず、本の装丁から建築内装まで幅広く活躍した。とあります。また、紙を型紙で染める技法「型絵染」で人間国宝。1976年、フランス政府より招請を与り開催した国立美術館における個展で仏政府から芸術文化功労章を受けるなど、日本の伝統美術を世界に紹介した。とされています。


これまで美術館などで芹沢げ雹瓩虜酩覆魎僂訶戮忙廚事は芹沢氏にはいわゆる美術に関して天賦の才があり、伝統的とされる染色の固定概念に捉われることのない人物なのだとの思いを強くします。氏は奇を衒う事のない斬新さ、創意に満ち満ちた作品を次々と創作されました。また、芹沢氏は染色だけに留まることなく幅広い仕事に取り組まれたようです。その生涯を通じ、判り易く、尚且つ温かみ溢れる作風を貫いており、各方面の人々に愛好されています。1984年、88歳で惜しまれつつ永眠しました。関連の薄いお話かもしれませんが、芹沢氏を崇拝してやむことのなかった白洲正子氏も同じ88歳でその生涯を閉じたことは決して偶然ではなかったのかもしれません。


型絵染を語る上で避けては通れないのが芹沢氏なのは異論はありません。然し、現代の型絵染の染織家にも当然ながら優れた染織家が存在します。その中のお一人がこちらの作品の制作者である下平清人氏です。作品は型絵染染織家下平清人氏の手によって美しく丁寧に彫上げられた型紙を使い、下平清人氏の手によって極めて美しく染め上げられた紬縮緬地の絵羽小紋です。 人間国宝芹沢げ陲忙媚し、技術の研鑽に励んできた下平清人氏の作品は丁寧が尽くされた型紙による美しさに尽きると言うことが出来るかと思います。 作品にはどこか芹沢げ雹瓩留洞舛鯀曚錣擦襪發里ありますが、民芸色が色濃く表れる芹沢げ雹瓩虜酩に対して下平清人氏の作品はどこかしら柔らかな作風でほのかな暖かみを想わせてくれます。 


その美しさの成否はやはり型紙の型彫りによって成り立っていると言っても言い過ぎではないのかもしれません。 いくら染色の技術が優れていようとも彫上げられた型紙に美しさが宿らなければなければ染織にその美しさを完結することは出来ないのです。 そして逆もまた然り、いくら美しく彫り上げられた型紙が在ったとしても 染色の技術が優れなければ見る者を魅了する美しさは宿らないものなのです。


以下はあくまでも個人的見解となりますが、力強さや信念のようなものが感じられることの多い芹沢げ雹瓩虜酩覆紡个掘下平清人氏の作品はやはりしらどこか控え目なようにも思います。こうした頁で私の想いを申し上げても詮無い事とは思いますが、それでも敢えて申し上げるなら、芹沢げ雹瓩領篭さ、染織に対する自己の信念までもが滲み出た作風もそれはそれで嫌いではありません。(むしろ好みかもしれません。)(笑) けれども個性が摺り染められたかのような、言わば「アクの強い」作品の目立つ型絵染にあって下平清人氏の作品から感じられる控えめで抑制の利いた作風は… それはとても好ましいもので、師と同様に美術的な天賦の才があるのを否めるものでは決してないのです。

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