星点る
一樹の影に
猫の恋
田中聡子
遠嶺
【絞り染め九寸名古屋帯】
―白猫―
着用時季・※盛夏を除く通年
墨黒色ひと色に浮かび上がるかのように表現された白い猫・・・ 意匠/デザインとしてはとても単調なものかも知れません。 彩色も僅か二色です。 でも、この染色には簡素化された平易な印象は微塵もありません。 僅か九寸と言う帯巾の中で表現されたのはモノトーンの美しさなのではないでしょうか。 徹底的にバランスが考えられた末に創られた意匠です。 白い猫を際立たせるかのごとくに表現された墨黒色なのだと思います。 この帯を前にして単彩な帯にありがちな無機質な印象は感じられません。 むしろこの帯から感じられるのは、色を加えない潔さの中に保たれた色彩美ではないでしょうか。 僅か二色の配色から色彩美なる印象をお話するのは可笑しな事かも知れません。 しかし、この帯を眺めていると考えに考えぬかれた色彩の美しさ、余計なものを加えないことでのみ生まれる美しさを想わせてくれるのです。墨黒色と、そこに浮かぶ白猫のコントラスト。 極めて高い手業と研ぎ澄まされた感性によって生まれる染色なのだと思います。
猫、テーマとしてはどこにでもあるのかも知れません。 しかし、ひとの目を魅了する力量は極めて深く、完成された美しさを保っています。 帯として仕立て上がり、着物に適わせたとき、こうした染色は装う者の趣を確実に表現してくれます。 数多有る染色の中で絞りはもっともはんなりとした印象を想わせる技法と言えるかもしれません。 絞りと一口に言っても鹿の子から桶に至るまで種々様々です。 こちらにご紹介させて頂く絞りは絞りの中でもとりわけてはんなりとした印象です。 どこか「柔らかさ」を想わせ、単純なようでいてその実手を掛けた痕跡を残している… いかにも京都で絞られた絞りの名古屋帯なのです。(※こちらは海外で絞りが施された染色ではなく、京都で制作されたお品となります。)
絞りの制作を知識の薄い私がほんの少しだけかいつまんで記しますと、意匠/design起こし、下絵の型彫をし、絹布に下絵の刷り込みをします。 防染箇所を専用のビニール用のモノで(その昔は竹の皮で防染したものです。)覆い括ります。 当然ながら一度の染色で染める訳ですからいわゆる「一回勝負」です。 やり直しは出来ず、失敗は許されません。 染めが上がりますと括りを解き、湯のし、仕上げへと続いてゆくわけです。 文字や言葉にすればたったこれだけの事なのですが、熟練の手業のによってのみ、このようなお品が絞り染められるのです。 白猫が絞られただけ帯、そう言ってしまえばそれだけの事かもしれません。でも、優れた腕が無ければ、白猫を描く(絞り染め描く)だけでこれだけの印象が出せないもの。 眺めていると、余白の美、(正確に言えば余黒の美、でしょうか、笑)即ち余計なものを足しこまない潔さ、そしてそれを通じて感じる美しさを見ることが出来ます。 美しく、そして見事な染色だと思います。
※現品限りです。
※青戸泰恵さんの出雲織に適わせてみました。帯の墨黒に色が引っ張られて少し黒っぽく写ってしまいました。 青戸さんの出雲のお色目はもう少し藍です。
商品番号 |
CKY-NAS-661 |
商品名 |
絞り染め九寸名古屋帯/白猫 |
品質 |
絹100% |
価格 |
¥158,000(帯地のみ仕立て無し/税込) ¥169,500 (芯仕立て上げ税込) ※一級和裁士による手縫い。 ※お仕立てに要する日数はご注文確定後 約2週間~20日戴いております。 |
巾/ 長さ |
八寸程/ 九尺八寸程※お仕立て上がりの際のサイズ |
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