【型絵染九寸名古屋帯】
―たからもの―
制作/荒川眞理子
着用時季・※盛夏を除く通年



様々な染織を見てきて思う、確信する、染織は思想だと。　染織/染色はテーマやモチーフを取捨選択し、染織作家たちが創り上げた作品です。　もちろん荒川眞理子さんもその例に漏れない。　いつも多彩な切り口で驚かせてくれる荒川眞理子さん、今回ご紹介する作品は「たからもの」です。　およそ何の意味も持たない染色が溢れかえる中で、一本筋の通った創意が感じられる。　後に制作されたたからものⅡは「和」と「洋」の混在を想わせますが、初期作品「たからもの」は和を強く想わせる作品です。　　


型絵染、その魅力（美しさ）の成否は型の美しさによる、と言っても言い過ぎではない。　いくら染色の技術が優れていようともその意匠に、その型紙に美しさが宿らなければ染色作品はその美しさの完結を見ることは出来ない。　そして逆もまた然り、いくら美しく彫り上げられた型紙が在ったとしても染色に美しさや独創が宿らなければ見る者を魅了する力は宿らない。

荒川眞理子さんによって美しく染め上げられた紬地の九寸名古屋帯となります。　柳悦孝氏に師事し、柚木沙弥郎氏に学び、技術の研鑽に励んできた荒川眞理子さんの作品の魅力は美しくデザインされた型紙はもちろんのこと、意匠/designの魅力と言い換えることが出来るのかも知れません。　こちらの作品にはどこか柚木沙弥郎氏の影響を想わせるものがあります。　しかしその彩色は柚木沙弥郎氏とは一線を画したもの。　版画のようなその作風は実に見事なもので染色作家として無限の可能性を感じます。　これまでに見たこともない、という意匠ではありません。　注がれた彩色も然りです。　でも、いわゆる単純な型絵染作品を見るような物足りなさは微塵も感じないんですね。　素晴らしい作品だと思います。

※現品限りです。　
※小格子が美しい真綿紬/新田英行作に適わせてみました。