【しじら織手織着物地】
帝王紫染め（貝紫）
―しじら織―
日本工芸会正会員
石月まり子 作品
経糸/貝紫染め
緯糸/貝紫染め

石月まり子、単なる着物としての布ではなく、染織工藝美術品としての着物や帯を創り続けた人（過去形なのはすでに機をおろされたから）　この作品が店内に座しているだけで店の空気感までも変えてしまう…。　単なる絹布である、けれど、絹布で片付けてしまうことの出来ない何か、、。　染織の神が居たとして、染織美の結晶を創り上げたなら…、そんな突拍子もないことを想い馳せてしまうオーラを持つ絹織物です。　石月まり子さんが創り続けてこられたものはこれまでの生涯においておそらく一度だってぶれていない。　柔らかでいて純粋に対象となる事象を捉える眼、　その眼差しの先に石月まり子さんの手があるのです。　織り上げられた絹布にとってそれはとても幸せなことだではないかと思う。　すべての“糸”に、石月まり子さんの手技のあとがあり、すべての”織”に石月まり子さんの創意が在る。　仕事柄（呉服商とは言え、そうした染織工芸美術には無縁のまま終える人もたくさん居る。）こうした染織工藝美術を見る機会は決して少なくはないけれど、こんな人、数えるほど、です。

ちょっとお話は変わりますが、着物は「作品」と「商品」に分けることが出来ます。　作品とは染織作家が国画会の公募展や日本工藝会の工藝展に出品するために作られたもの、あるいはそれらに準ずるもの。　他方、商品は産地の伝統的工芸品から量産品まで随分と実にその幅は広い。　一般的に呉服店の店頭に並んでいるものはおしなべて商品で、作品と呼べるものは極々数少ない。　作品と商品、では実際にどこがどう違うの？と言われても箇条書きで答えるには難しいけれど、実際にいろいろ見比べたり、たくさんの品々を見てきた方には確実に違いが判ると思う。　


お話を戻します。　染織家である石月まり子さんがかつて抱いたであろう想像/imagination、僅かな心の揺らぎさえ織り込められたような真っ直ぐな創意の結晶に唯々惹き込まれてしまいます。　作品は瑞々しい絹の生命の気配に満々ちていて、ぼんやりと眺めているとこれが着物だと言う事を忘れて魅入ってしまいます。　蚕がつむぎ出す極上の糸をその素材として織り上げる。　その事に作品の魅力が在るのではないのです。　もちろん、あるひとつの側面として作品の魅力や価値の一つとはなっています。　でも、私にはそんなことはやはりどちらでも良いと思えてしまうのです。　こうした染織の魅力はやはり染織そのものが保つ圧倒的な「美しさ」に尽きるのではないでしょうか。　言わば作品に宿る独創的な“創造の美しさ”でしょうか。　作品の解説とは難解な言葉で美しさに付加価値を付ける事がすべてではありません。　何処の誰某の染織家に師事したと言う「ハク？」などというものもこの作品が放つ美しさの前には何の意味も持たない。　もとよりそうしたことがこうした染織作品の紹介に適っているとは私には思えません。　それを付したところで本質的な美しさを解析出来るものでは決してないのです。　本品は眼にした瞬間に見る者の眼を釘付けにし、魅了してしまう美しさを保っています。　その感じたままの美しさ、本来ひとには備わっている筈の「直感」を大切にしてご覧頂ければと思います。　ぜひ、感じてみてください。 　

この作品の保つ最大にして最高の魅力は石月まり子氏がこ作品に籠めた創意、想像/imagination　です。　ある意味“突き抜けた美しさ”を放つ染織だと思います。 　また、こうした着物はご存知のように礼装としてお使いいただく着物ではありません。　カテゴリーで言えば極めて上質なカジュアル以上礼装未満かと思います。　季節を想えば３月～６月、９月～１１月の長くなったお単衣でしょうか。　１、２月の厳冬期は印象的に適わないかもしれません。（※袷にお仕立てしてお召し頂きましても構いません。）　そしていつも思う事なのですが、こうして写真を撮影してUPロードする訳なのですが、お色目も模様もこの通りなのですが、実際のお品が保つ質感と力は画像の数倍以上…とお伝え致します。