【型絵染九寸名古屋帯】
絹/麻地
国画会/冨田昭子作品
―月と星―



月と星。　まだ太陽は眠りその姿を見せない午前零時、万物が眠りにつくその時に月も星も輝きます。　太陽が目を覚ます数時間の間、白く輝きやがて朝陽とともにかき消えてゆく…。　落日とともに静かに浮かび上がる月と星、陽が高くなるころにはその美しい姿はどこかに消えてしまう。　金色に輝くその姿は他のどの星よりも美しく、かつ神々しいように思います。　満月も上弦の月も三日月や待宵月も、どれも月の姿は神秘的で美しく、その姿を描き写したこちらの作品もまた極めて美しいのです。　過去、何度も異国に足を運んだ経験がありますが、異国の地で見る月と日本で見る月、同じように見えるのか、果たしてそうではないのか、幾度も見逃してしまったことはいまでも数ある後悔の一つでもあります。　

こちらの作品についてもう少し申し上げれば、この帯の持つ魅力はその意匠の秀逸な事だけではありません。　ご覧戴けますように月と星が染め描かれただけ、と言っても間違いないのですが、幾重にも重ねられた月と影、そしてキャンパスとして選ばれた絹麻の地の質感とそこに注し込まれる手差しの色味の巧みさがこの帯を単なる型絵染の作品以上に見せているのだと思います。　要するに…、早い話、なんとも魅力的な染色にその意匠に目を奪われてしまうのです。もっと言えば美意識の高い啓かれた人にはひと目で判る意匠であり作品なのです。難しく訳知り顔をしなくても、わざわざ難しくするような難解な解説？など加えなくても美しさは確実に見るひとの“目に映る”ものですし、安直に染められたものとは確実に一線を画しているものなのです。　やはりり良いものは良い、と言う他ないのです。

※趣の感じられる麻織物、小千谷縮や上布、無地感覚の紬や御召織物など等に御使い頂けるかと思います。
※御使いのモニターによりましては単なる青色地に映っているかもしれませんが、そうではなく、青色に緑を一滴垂らしたかのような何とも言えぬ色…、極めて味わい深いお色目なのです。