【手織り綾織物】
―絹雲織―
勝山さと子/墨色綾
※墨色に近いチャコール

季節感を想わせない墨色の無地感覚の綾織です。　墨色と言われる色の定義は広く、捉えにくいかも知れません。　別の表現を借りれば「濃いチャコールグレイ 」赤みの無いチャコールグレイ。　深みのある色目は適わせる帯によって様々な表情を見せてくれます。　本品、絹雲織はいわゆる綾織です。　平織りでは見ることのできない織感が、控えめな光沢とともに見る角度や時間によってエレガントな印象だけでない、シックで、すっきり垢抜けた、都会的な印象を放ちます。　実際にお召しになられますと、知的な印象、大人の女性の気品を感じさせてくれます。　何気なく眺めていると、特に何の細工も掛けられていないように見える織物です。　でもよく見掛ける無地織とは確実に異なる印象を受けます。　この綾織物には無地感覚の織物から感じがちな退屈で平凡な印象を感じることはありません。　


織物を極めて単純な言い方をしてしまえば、経糸と緯糸を交差させてつくられたもの…、でも、織り手となる「ひと」によってそれは様々な表情を見せてくれます。　時にそれは意図したものであったり、織り手の意図しないものであったり。　同じ糸、同じ染色、同じ機で織ったとしてもそこには明らかな違いが生ずる。　そしてひとはそれらを「味」と称する訳です。　この綾織物をとりわけ魅力的なものとしている理由の一つはなんといってもこの「色」ではないでしょうか？　チャコールがかった墨色が絹布全体に深みを感じさせています。　平易な言い方をしてしまえばチャコールブラック、（いわゆる黒ではありません。）ですが、そう言ってしまっては申し訳ないほどの色の質感です。　本当は墨色、チャコールブラックと言う表現も適当ではないのかもしれません。　何故なら、見る時間、角度、陽光の下、室内の光によってどの部分を見てもそのように見え、またすぐにそれは印象を変えてしまうから…。

単なる無地感覚の織物としてはとても味わいが在ると思いませんか。　美しい綾織にしか感じることのない規則的な浮き沈みががそう想わせるのでしょう。　それが見る角度によって、色相を変えてみたり、経糸の細工によって小格子のように見えたりもするのです。　実はそれも勝山さと子さんの絹雲織の個性なのです。　つまり、小格子のようにも見えるのはそれは仕掛けられた図り…　言わば勝山さと子さんが創造した規則的な美しさなのです。 　また、こちら いわゆる墨色ですが、なぜか温もりのようなものを感じさせてくれます。 なぜそう感じるのか私には分かりませんが、制作者の「手間暇」「想い」「息吹」がそう想わせるのかも知れません。

こちらの絹雲織ですが、いわゆるオトナの女性によるオトナの女性の着物です。　例えば、紅型や藍型の染帯、或いは木綿の織り帯（土佐手縞や丹波布）の帯、紙布織りの帯を締めてお召しになられますとカジュアルな美しさとなるかと思います。　無論言うまでもなく上質な織の帯との相性は秀逸で装うひとの美意識の高さ、趣向の豊かさ、上質なお洒落、をさり気なくアピール出来る、そんな綾織物です。　画像ではアトリエ品川/紅唐草、湯本エリ子/胡蝶蘭※弊店別誂え染め、多ち花/正倉院鹿紋※弊店別誂え染め、阿部容子/ウエノリチオマージュ、などを適わせてみました。　こんな取り合わせも素敵ではないでしょうか。
※帯コーデ画像と商品単体画像で色が異なる場合がございます。