舫はるる
だけの小舟や
風の色
柿沼盟子
風土
【型絵染/九寸名古屋帯】
―はっぱ― 紬地 染料/ラックダイ・鉄媒染
制作/荒川眞理子
葉っぱが型絵染で描き染められています。 銘もそのままに「はっぱ」、、。 葉っぱって…、どうなんでしょ。 帯の題材に花を描き染めることは多いけれど、「葉」だけ(※実際にご覧頂きますと葉の付け根には隠し絵のように幹が描かれています。)をモチーフとして描くことはあまりありません。 加えて言えば何よりも何の変哲もない「葉」という素材がただそれだけで画として果たして成り立つのか、、。 でもですね、荒川眞理子さんの手にかかるとご覧頂く通り、成り立つのです。 唯、葉が描き染められているだけなのに画の中に吸い込まれてしまいます。 この画の見事なのは一枚一枚の葉っぱがこの位置でしかないという箇所に、この色でしかない、という色で収められていること。
染色、産業としてそれを捉えるならば、そのための手段としてこうした型絵染なんていう非効率的な方法を選ぶなんてことはまず十中八九、いや120%ない。 至極当然と言えば当然です。 インクジェット印刷なんてもうスルスルと量産(印刷)出来てしまう訳ですから。 要するに織りにしても染めにしても手仕事っていうのはとても効率の悪い仕事なんですね。 だから布に魂を込めない経営者たちは効率よくお金を得るために手仕事なんてことはしない。 ま、当たり前中の当たり前です。 目指すゴールが違う訳ですから。 こうした布というものは桑や綿を育てるところから始まる訳でお蚕や綿から丁寧に糸を取り紡ぎ、機に掛け、(織物はすでにこの時点で糸を先染めしていますけれど)顔料や藍、自生する植物から抽出した染料で染めるところまでを手仕事でまかなうのです。 無論染めた糸を織る、繍をする、手描きや型染を施す、そのすべてが“ひとの手仕事”なのです。 ときに作家と称されたり、職人と呼ばれる人の手が作り上げる訳です。 要するに量産とは対極のところにあるのが染織工藝なのです。
例によってちょっとお話が逸れてしまいましたが、こうした美しい染色というものは、冒頭で少し触れましたように染色家の創造の背景に在る音や言葉、もっと言えばその匂いまでも感じさせてくれます。 なかでもとりわけそこに存在する、或いは存在したであろう音を想い浮かべることは実に楽しいものです。 荒川眞理子さんの型絵染九寸名古屋帯「はっぱ」実に見応えがあります。 デッサンをする荒川眞理子、型彫りをする荒川眞理子、絹布に描き写す荒川眞理子、その時の心の鼓動、高鳴りまでもが聴こえてきそうな作品です。
背景に引いたくすみの深蒸した蝋色(微かに赤みを帯びた墨色)は荒川眞理子の中の秋めく心のセンチメントをとっぷりと浮かび上がらせているように見えます。 また見ようによっては無意識のうちに息を止め、作品に見入っているかのような静寂も想わせてくれます。 こちらの絹布は帯として描き染めてあります。 それゆえ眺めるだけでなくお使い頂きたい名品です。 心の中の耳を澄ませ、想像力を膨らませて名品と対峙してみませんか。 せっかく日本という染織の宝庫の国に生まれたのですから。
結城紬や飯田紬、郡上紬、三才山紬、etcに適うのはもちろんなのですが、大島や久留米絣など藍木綿にも素敵ではないでしょうか。 参考コーデは小田島克明さんの小田島格子です。
商品番号 |
OTK-AKM-27 |
商品名 |
型絵染九寸名古屋帯/荒川眞理子・はっぱ |
品質 |
絹100% |
| ¥388,000(帯地のみ仕立て無し/税込) ¥399,500 (芯仕立て上げ税込) ※一級和裁士による手縫い。 ※お仕立てに要する日数はご注文確定後 約2週間~20日戴いております。 |
巾/ 長さ |
お仕立て上がりの際のサイズは帯巾・八寸~八寸二分程。/ 長さは九尺八寸程。多少の変更は出来ますのでお尋ねくださいませ。 |
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