【型絵染九寸名古屋帯】
―夏越の鈴―
制作/国画会　竹田園子


竹田園子/北海道教育大学岩見沢校 准教授として美術教育に力を注がれる一方、北海道美術協会会員として美術の啓蒙活動に携わっておられます。　2011からは国画会会員として美術の啓蒙活動に携わっておられます。　制作者である竹田園子さんの感性から生み出される作品は、これまでの作品も然り、本作品も実に色の使い方が巧み、ところどころに「記憶の中の描写かも？」と想うところもあり、空想と現実がフラットに溶け合っています。　ファンタジーを感じる作品にありがちな異様な表現などもちろんない、過度な彩色もない、想像の中で俯瞰した風景の一部分を切り取っているようにも思えるのです。

こちらに掲載の型絵染ですが、夏越の鈴という銘が付されています。　実は今年、2023年の国展の出品作品です。　ですので、春に六本木の新国立美術館において催される国画会主催の国展が終了した後、支部既定の名古屋展、福岡展の巡回展を経て、ようやく手元に届けられました。（なんとも待ち遠しかったことか）さて、誰もがご存知のように神社では鈴を振り鳴らしお参りをします。　神社にある鈴は清々しい音色で参拝する者を敬虔な気持ちにします。　鈴の音は参拝者を祓い清めると考えられています。　新年に向けて新たな気持ちの始まりとして、あるいは新たな事の始まりとして区切りになる折、新しく鈴を誂える、まさに夏越の祓、そんな気持ちを籠めて制作されたのかも知れません。


本作品は極めて精緻な型を用いて描き染められています。　これほど精緻な型を何枚も彫り、描き染め上げる型絵染作家を私は他に知りません。唯一無二といっても言い過ぎではないでしょう。　表現力の在る彩色が施され個性的な印象です。　意匠/designと紬の素材感が相俟った印象は、あるひとつの型絵染作品として極めて美しく完成されています。　作品からは心の中に映しこまれた彩が消えてしまわない内に彩を差し込めたような瑞々しさを感じます。　とても美しく、且つ丁寧に手差しにて施された彩色…　この色彩、単なるそうした表現では捉えることの出来ない、深い深い彩りを感じさせてくれます。　系統として地色はラベンダー系となりますが、そこに地味とか派手とかいう短絡的な印象はありません。　何よりもこの帯が保つ雰囲気や表情そのものを愉しんで頂きたい、そう思います。　和の装い、とりわけカジュアルな装いにおいて最も大切なのは「心からわくわく出来る」です。　参考に勝山さと子さんの絹雲織綾/萌黄色のしけ引きに合わせてみました。