ペン立ての
鉛筆尖り
冬深し
山崎祐子
栴檀
【三才山紬】
草木染手織り紬織物
使われた染料/山漆・栗
制作/横山みゆき
自然が生み出したものにヒトの心と手が生み出したものを織り合わせる(交差せる) 自然の植物はとても美しい。 自生する栗、山漆の葉も美しい、 そうした風景に想いを馳せながら美しい絹布をぼんやり見つめていると織り人の「手」が見えてくる。 目の前に置かれた作品の向こうに見える織り人の息づかいを想う、 落ちる午後のやわらかな陽光… 資料の山漆の葉の写真を眺めているとこの繊細さを創ったものを思う。 一片の葉と布… そのどちらもその時にしか出来なかったであろう美しさ、、。 三才山紬は横山さんの人生そのものだと。 日々機と向き合う横山さんの創る三才山紬は現代的なテイストで構築した、横山さん独特の紬織物なのです。
三才山紬(みさやまつむぎ) 工藝染織を愛好される方であれば、その名前に聞き覚えがあろうかと思います。 工藝染織の愛好家の方の中にはむしろ私などよりもっと詳しく識っておられる方はたくさん居られるのかも知れません。 三才山紬は信州長野、松本市近郊の三才山で織られる紬織物です。 三才山紬は三才山という地名が織物の名となっておりますが、その土地の伝統工芸ではありません。 柳宗悦氏の掲げる民藝運動に感銘を受けた横山英一氏(故人)が、戦後郷里で興した機(はた)なのです。
機を手掛けるのは横山俊一郎さんの機を継承する横山みゆきさん。 父、俊一郎さんの意志を継ぎ、制作のすべてを自らの手で紡いでいます。 裏山に自生する植物を摘み、その生命ともいえる染料を採取し、自らの手で糸をつくり、染め、機を織るのです。 そのすべては自己の仕事に対する確固たる拘りから。
つまりすべての工程が人の手による手織紬なのです。
三才山ですが、制作される数には限りがあります。(お弟子さんをとって織らせている工房ではありません)ご家族で一布ずつ丹念につくるだけの織物です。 商才に長けた生産者から見れば極めて非効率な仕事として目に映るのかもしれません。 三才山紬はそも効率を求めて創られている訳ではありません。 すべての工程に自らの肺腑に響く仕事を重ね合わせた結果、そうなっているのです。 いかなる妥協も躊躇も介在しない志の籠められた染織は、「浅薄な思想から量産される見てくれだけを整えた布地」とは確実に一線を画すものなのです。
さてさてこちら、、。 墨色にほのかに涅色 (くりいろ)を溶け込ませたかのような色がなんとも美しい絹布です。 兎にも角にも唯一枚の布、一枚の絹布として唯々美しいのです。 単にダークな色系の一枚の絹布と言ってしまうにはあまりにも勿体ない存在感があるのです。 画像でお分かり頂けますようにいわゆる無地の格子柄です。 当然ながら細密な絣が施されている訳ではありません。 複雑な織技が掛けられている訳でもないのです。 でも稀有な存在感を放っているのです。 唯一枚の絹布として圧倒的な存在感があるのです。 緯糸に打ちこまれた糸の微妙な彩りの異なりと調和。 大袈裟な言い方をしてしまえば同じ色は唯の一本たりともないのではないか、と思わされてしまう程、様々に微妙な濃淡と糸そのものに表情があるのです。
聞き慣れない言葉かもしれませんが、糸には糸の表情なるものが在ります。 染められた糸という糸の一本一本に表情があり、色があり、質(たち)が在るのです。 在ると言う表現はこの際に適当ではないのかもしれません。 在るのではなく、横山さんの「手」によって籠められた、とした方がより真実に近いのだと思います。 いや、もしかしたらそれも適当ではないのかもしれません。 「手」は物理的にそこに介在しただけで実際に籠めたのは横山さんのこだわりであり、もっと言えばそれは横山さんが貫いた「流儀」なのかもしれません。
お色目が判りづらく申し訳ございません。 こちらは「山漆」で染められた糸を用いて織られた草木染の紬織物です。 そのため、撮影の時間の経過によっても様々に色の表情が移り変わり、加えて撮影する角度によっても青みが見えたり、茶みが見えたりします。(青や茶に見えるという事ではありません、どこか仄かに青みを感じたり、茶みを感じたり、という意味です。) 実際のお色目は和を想わせる墨色、僅かに茶みを帯びた墨色地に灰色の格子が交差しています。 とてもとてもナチュラルで、それがまた魅力的な雰囲気を醸し出しているのです。 またこちら、極めてしなやかなでやわらかな生地風なのですが、その中にさらりとした質感も感じられます。 昨今着る季節の長くなりまたお単衣にお仕立てをなされてもとても心地よいのではないでしょうか。
呉服商を生業としている者が申し上げるのもおかしなことかもしれませんが、この時代にこうした織物が新しく生まれてくる。 それは極めて貴重なことであり、嬉しさのこみ上げてくるような思いになります。 いま、私の目の前にある絹布は素朴では有るけれど、素朴なだけでは表現しえない質感を保っています。 まるで細やかな刷毛で染めたかのように見えもする地色も美しく… 正に見事な染織工藝品なのです。 それは見ていても触れていてもつくづく気持ちよく、心地よく、五感のすべてを満たしてくれるのです。 こちらの作品は京都の織物商がすべてを指定して発注したお品、オーダーメイドなのです。
※画像は伊那紬の名古屋帯、湯本エリ子さんの手描き友禅「ホトトギス/杜鵑草」を適わせてみました。
商品番号 |
OTK-MST-33 |
商品名 |
草木染手織り紬織物/三才山紬 制作/横山みゆき |
品質 |
絹100% |
価格 |
¥337,500(表地のみ仕立て無し/税込) ¥379,500(単衣仕立/居敷当付き/税込) ¥391,500(袷仕立上げ/胴裏・八掛/税込) ※一級和裁士による手縫い。 ※お仕立てに要する日数はご注文確定後 約3週間~25日戴いております。 【※単衣仕立てをご希望の際はお尋ねください。】 |
巾/ 長さ |
38cm程(※約一尺程)/※12m60程 (※約三丈三尺三寸)多少の誤差はご容赦ください。 |
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