ゆるり行く
ちらほら淡い
秋の色
長崎桂子
あを
【手描き友禅九寸名古屋帯】 ―秋の訪れ―
制作/山本由季
紬地
「手描き友禅」 定義として手描き友禅を記せば、「型紙を用いず手描きで描き染めた友禅」、です。 手描き友禅における特徴のひとつに糸目を置く仕事があります。(※ぬれ描きなんかはまた違います。) 糸目とはつまり模様の輪郭を縁取る白い線(防染糊の跡)の事。 真糊糸目(まのりいとめ)と呼ばれるモチ米を原料とした防染糊を柿渋紙で作った円錐型の筒に入れ、糊を白生地に細く出しながら下絵に添って置く輪郭のことです。(※昨今はほとんどがゴム糊を用いたゴム糸目となりました。同じ用途なのですが仕上がりは全く異なります。) 糸目を置き終えますと次はその内側に彩色を施し、さらにその模様のすべてを防染糊で防染し引き染めをします。 最後に防染糊を洗い落とし、蒸気で蒸して色止めをし、手描き友禅の仕上がりとなります。 物によっては絞りを加えたり、刺繍や金銀泊を置くこともあります。 いかがでしょう、染織を資料として収集したりするのでなければ、こうした技法のお話は退屈と思われる方も多いかと思います。 装い愉しむ事を一義的に想う際、やはり大切なことは美しいか否か。訳知り顔で話さなければならないお話はそうした専門家に任せ、美しさを中心にお話してみたいと思います。
こちらの作品は山本由季さんの手による創作手描き友禅“秋の訪れ”です。 上述しました手描き友禅の染色技法とは少し異るのかも知れません。 作品から受ける印象は画家が描く絵画に近いように感じます。(画家でいらしたお父様の血を色濃く受け継いでいらっしゃるのでしょう。) フリーハンドで想いのままに描き染められていることがわかります。 気持ちが動くまま、筆の動くまま、刷毛の動くままに描き染められているように思います。 そうした一見大胆にも感じる作風が、本作品の最大の魅力なのです。 おそらくざっくりとした下絵を描いた後、一気に描き染め上げたのでしょう。 こうした描き方はあえて言うまでもなく相応の手業に裏打ちされたものなのですが、上述した友禅の技法とは少し異なるものなのです。 上述した友禅は修練によって取得出来る手業ですが、こちらはそれに加え、天性の絵心、持って生まれた芸術的な感性が必要なのです。 つまり、山本由季さんは「画家」、としての天性を強く持っているのです。 巾35cm、長さ5m弱の絹のキャンバスに描き染める画家、山本由季、の作品です。
手描き友禅の技法に捉われない、類稀な感性で創作する“手描き友禅の画家”なのです。 これは山本由季さんが描き上げた一枚の絵画。 作品の特徴の一つに挙げられるのは、何と言ってもその想像力のやわらかさと言うことが出来るのかもしれません。 一切の制約に捉われることのない自由な想像力から生み出される作品です。 芸術、美術、工藝とは本来そうあるべきと思っています。 何かを創り出すとき最初に在るものはイメージです。 こちらの帯もほんの少しの過去の時間(とき)には山本由季さんの思考の中の想像でしかなかった筈です。 いや、もしかしたら思考にさえ無かったのかもしれません。 秋のまだほのかな温もり残る季節に想像されたのかも知れません。 すべての創造はいつかの瞬間、瞬間であったのかも知れません。 山本由季さんの作品の多くはいわゆる手描き友禅です。 山本由季さんの作品がいつも心を捉えて離さないのは、そのやわらかな想像力を創造に変えるべく巧みに操る手先です。 極めて美しくバランスされた彩色に目を奪われてしまうのです。 ときに絹布からあふれ出してしまうのではないか、と思えるほどの彩色です。 難しい顔で難しい解説をしなくても、解りづらい解説を記さなくても美しさは確実に“目に映る”ものなのです。 やっぱり美しいものは美しい、と言う他ないのです。
こちらの帯ですが、描かれているのは花模様なのですが、特定の花が描かれているわけではありません。 銘やテーマに留まることのないひとつの絵画です。 秋冬だけでなく、春先など真夏以外の通年お愉しみください。 紬や木綿、小紋などにどうぞ。
商品番号 |
TGY-YMY-36 |
商品名 |
手描き友禅九寸名古屋帯/山本由季作品 秋の訪れ |
品質 |
絹100% |
価格 |
¥335,000(帯地のみ仕立て無し/税込) ¥346,500 (芯仕立て上げ税込) ※一級和裁士による手縫い。 ※お仕立てに要する日数はご注文確定後 約2週間~20日戴いております。 |
巾/ 長さ |
お仕立て上がりの際のサイズは帯巾・八寸~八寸二分程。/ 長さは九尺八寸程。多少の変更は出来ますのでお尋ねくださいませ。 |
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