雲海の
下ツンドラを
河うねる
菅谷弘子
雨月
【西陣織袋帯】
―雲流― 新色 制作/洛風林
雲流と銘されたこちら、行雲流水から銘されたものなのか、觔斗雲を出典としているのか、またそのどちらでもないのかも知れない。 古(いにしえ)の織物なのか、現代の織物なのか、ただ一瞥しただけではわからない…。 もしも行雲流水であるならば、自然の流れに抗うことのない水の流れ、雲の流れは足の向くままに各地を行脚した禅宗の僧の心境を写し取ったものであることが想像出来ます。 雲の紋様は吉祥雲や彩雲とも称され、太陽や月、雲や水に神を想う日本人の心象が映し出されているとも言えるかも知れません。 雲流に雷や龍などを組み合わせた雷文や雲龍文などの意匠から感じられる、どこか滑稽でユーモラスな印象とは異なり、やはり雲流は和の文様から感じられる特有の厳かな空気を想わせてくれます。 それはこの意匠designから感じられる固有のものかも知れません。
唯々雲が織り出された意匠なんですが浅薄な感じは一切感じられないんですね。 むしろ伝統的とか純粋な日本的な印象が伝わってくるんです。 ご覧頂きましてもわかりますように見るひとの目に強く訴えかける色彩印象の強い帯ではありません。 絢爛豪華な印象でもありません。 光沢を抑えた白磁の静けさ、その中に色味を変えて織り込められた灰藤(微かに藤色みを帯びた灰色)と空五倍子色 (うつぶしいろ)の雲流の厳かな空気が印象的な一点と言えるかと思います。 まさに吉祥を表現し、和の文様の美しさが織り込められた織物と言えるのではないでしょうか。 眺めていると天上の生命としての「雲」を織り込めたかのような馥郁たる「趣」と「品」が感じられるのです。
西陣織特有の「よそゆき感」をしっかりと保ちながら、西陣織に有りがちな「教則的」な感覚とは確実に一線を画しています。 昨今の西陣織の多くは自動織機で織られます。もちろん自動織機のすべてを否定するつもりはありません。 むしろある程度の量以上の生産を見込めば自動織機以外の選択肢はないと言えます。 問題はそこに至るまでのプロセスに有ります。 多くの西陣織に見られる頽廃的な印象はプロセスに有ると言っても過言ではありません。 ありきたりな西陣織は、お仕着せの着物の装い、ただ着物を着ています的な装い、会服的な着物の装いにおいては、間違いの少ない無難なものとは言えますが、やはり、「趣向が表現された装い」ではないように思います。
現代の西陣織は過去の西陣織を鑑みることが出来るという点において過去の染織を模した制作を選択することも出来ます。 要するに過去の染織を真似る訳です。 ただそこに新たな創造はありません。 伝統を範とした踏襲も大切ですが、常に過去の染織を超える、と言う職人の矜持失くして西陣の進化はあり得ません。 現代、アンテーィクと呼ばれる染織も過去の染織を鑑み、超えているのです。 超えているからこそ現代アンティークと賞されているのです。(超えていなければ単なる古物なのです。) つまり…、現代の西陣の職人の創造が形としてのイメージとなり、「つくる」と言うプロセスを経て範を超え、新たな西陣織の作品となり完成するのです。 そしてその創造こそが、観るひとを魅了し、心に響く感動を与えてくれるのだと思います。
こちらの帯は礼装や略礼装の装いにおいてさえ、装いを愉しむ豊かさをもたらしてくれます。 こうした染織は西陣織の無限なる叡智を想わせてもくれます。 人の芸術に対する想いや創造は止まるところを知らないかのようでもあります。 織物にしても、染物にしても、創り上げられた作品に批評を加えるのはいとも容易いことだと思います。 しかし、工芸や創作にほんの少しでも触れた経験が有れば容易に解かることなのですが、「無」から「有」を生む物理としての作業だけが創作ではないのです。 そこに至るまでには実際の創作以上に永い時間が掛けられているのです。
最後にあとひとつだけ付け加えさせて戴くならば…。 この織物の最大の魅力の一つは魅力的な色彩に加え、間違いなく、この西陣織の織り感/質感であろうかと思います。 いわゆる量販品の西陣織では見ることのない織味なのです。
商品番号 |
TKT-MKM-01 |
商品名 |
西陣織袋帯/洛風林 雲流/新色 |
品質 |
絹100%※金銀糸を除く |
価格 |
¥396,000(表地/税込) ¥407,500(芯仕立上/税込) ※一級和裁士による手縫い。 ※お仕立てに要する日数はご注文確定後 約2週間~20日戴いております。
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巾/ 長さ |
八寸一分程(約31cm)/ 一丈一尺五寸程(約4m40cm程)・※お仕立て上がりの際のサイズ |
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