水流の「季・とき」折々・・・
「季・とき」折々…2020年11月27日(金)
時雨虹
立ちし比叡山や
門跡寺
坂上香菜
璦
◆ご依頼を賜りましてありがとうございました◆
【手仕事の美しい友禅と琉球絣】
先日の誂え直しの依頼の続き
紅色の大島のお仕立て替えのご依頼を頂きましたR様、他にも多くのご依頼を頂いておりましてその内の一部をご紹介させて頂きます。
橙色の地色がうつくしい琉球絣はR様が叔母様から譲り受けられたものだそうです。 琉球絣は紺色や焦げ茶などのダークな色調が多い中、こちら、南国琉球の海に溶け込む間際の夕陽のような橙色がとても美しく、R様のお嬢様の寸法にお仕立て替えをさせて頂きました。
見事な手仕事の訪問着は紅色の大島同様、R様がお若い頃にお召しになってらしたもので、こちらもお嬢様の寸法にお仕立て替えさせて頂きました。
ただこちら、身丈がお嬢様には短かったことと、訪問着は柄の位置が決まってることもありますのでお手元に残されておりました余り布を使い、帯の下に入る位置で胴はぎをし、身丈を出しました。
うつくしい仕上がりにご満足頂きました。またお嬢様のお召し姿拝見させてくださいね。
巾一尺程、長さ三丈四尺余りの一枚の絹布から姿を変える着物、その背景にはいろいろな物語が隠されています。 そしてこの度の琉球絣、訪問着、そのどちらにも思い出が詰まっているのだと思います。断片的であった思い出もこうして命が吹き込まれた着物を見るとさまざまな思い出が一つの物語となって甦るのではないでしょうか。
一枚の着物と思い出、それはお客様にとってどちらもかけがえのない大切なもの。
現代社会の中において着物を着る、それはどうゆう意味を持つのか。 そこにある種の非日常が在るからではないでしょうか。 自分の内面に揺らぐ事の無い基準を持つ人はいつの世にもいて、そうした人はぶれることがありません。映画監督、小津安二郎の遺した言葉にこんなことがあります。「どうでもよいことは流行に従い、重大なことは道徳に従い、芸術のことは自分に従う」心の中に藝術を持っている人は強いのです。
この度は大切なお着物のご相談を与りましてありがとうございました。