【手織九寸名古屋帯】
―花だより―
　制作 小名木 絵千翔
経絣・花織・模紗織
着用時季・単衣/袷



ひとの想いが創造し、ひとの手で作られたものはさまざまな気配<エネルギーと言い換えてもよいでしょうか>に満ちている、といつも私は感じている。（思っている。）　無論それは染織に限ることではないけれど。　作品が発する声に耳を澄ませ、心を近づけると不思議なことに自分の内にあるもの、無意識の領域に在る感受性が瑞々しく湧き起ってくる気がします。

　 セオリー（Theory）
セオリーとは至極単純に言えば「理論、学説、定石」という意味なのだが、それに従っているうちはこうした作品は創れない。（と、私は思う。）　自分の脳裏を染める色、記憶、質、を一片の躊躇なく作品に映すことが出来なければ創造の枠の中にも入れない、織の音色、色彩の対比で見る人に予期せぬ創造を予感させることも出来ないのです。

　 こちら、創作における苦悩や憂い、抑揚や心の揺らぎまでも彩に変えて絹布に映しこむことの出来る染織家/小名木絵千翔さんの作品です。ひとつひとつの箇所を見れば、そのどこにも特別なことが施されている訳ではない。　それなのにもかかわらず、ある一枚の布、ある一つの作品として見ると、極めて稀な個性が感じられる。　古典的な絣と花織を模紗織の枠の中に美しくデザインし、現代的なテイストで再構築しているのですが、デザインにはある種一つの静寂が保たれ、いつまでも眺めていられるのです。

小名木 絵千翔さんは母/小島秀子さんの元で染織を学ばれました。国画会/国展にも意欲的に出品をされています。　 　

※参考コーデは江戸小紋/極行儀・本場結城紬/無地織に合わせております。