ミモザ咲く
修道院の
石畳
野田光代
雨月
【絞り染め九寸名古屋帯】
―ミ・モ・ザ―
小野順子作品 塩瀬地
寒さも峠を越え、空気の匂いも春めいてまいりました。 春と言えば真っ先に思い浮かべるのはやはり花ですね。 その春の訪れを告げる代表的な花の一つにミモザがあります。 ご存知のようにミモザの正式名称は銀葉(ぎんよう)アカシアです。 銀葉という名前を冠に持つことからも分かりますようにシルバーリーフとも呼ばれるミモザの葉は観る角度によって銀色みを帯びていて、可憐な花の姿形を更に引き立てていますね。 ヨーロッパでは黄色は春を表す色とされていて、イタリアでは3月8日を「ミモザの日」と定め、暖かな春の到来を告げる幸せの花とされているようですね。 また、南フランスのニースで行われる「カーニバル」、マントンの「レモン祭り」、と並んでカンヌ郊外で開かれる「ミモザ祭り」がこの時期の南仏3大祭りなんて言われます。
さてさてこちら、型染めとも違う、手描きでもない、刺繍でもなく、もちろん織でもありません、、。 絞り染め、で表現されたミモザです。 絞りの持つ特有のやわらかのおうとつが微かな光と影を生地の上に作り、それがなんとも優しい表情となって見る者の眼に映ります。 ミモザはこうした染色に置いてモチーフとされることはそれほど多くはありません。 理由は簡単です。 お使い頂ける季節が比較的限られてしまうからなんですね。 でも、本来、着物の醍醐味の一つに挙げられるものは季節感なんですね。 その季節を愛で愉しむ、言わば着物の愉しみを一番感じられるところでもあるのです。 通年お使いになれるものには季節を問われない気楽さがありますが、季の移ろいを装う愉しさには抗しがたい魅力があるのです。
制作者の小野順子さんは辻が花染めの小倉建亮氏に師事し、今の作風を作り上げました。 つまり辻が花の技法を用いた絞り染めです。 上述しましたような確信的な潔さ感は秀逸以外の何物でもありません、届けられた包みを解き、目の前に表れた美しさに思わず「ふぅ、…」とため息が漏れてしまいました。 こちらのミモザは草稿を見せて頂き、弊店がオーダーして制作して頂いた作品なので、およその仕上がりを予想出来ていたにもかかわらず、引き込まれ…、眺めているそばから、どんどん惹き込まれてしまったのです。 ちょっと自分でも驚いたのですが…。
でも、秀逸な作品と言うものは往々にしてそうしたものです。 テーマ、モチーフがでこれまでに見たことのあるものであったとしても、一瞬のうちに、見る者を魅了してしまうのです。 つまり…、制作者が本気で(ここ大事なところです)楽しんで創っているんですね。そう思いました。 どこをどうすれば、「美しさ」が生まれるのかをちゃんと制作者の内なる美意識が理解している。 要するに平たく言えば“真剣に向き合っている”のが分かるのです。 これは私が一番大切に思っている部分でもあります。 そしてその観点からも秀逸な染色だと分かるのです。
ミモザと花器以外、余計なものを一切書き込まない余白の美、余計なものを描きこまない潔さ、そしてそれを通じて感じる美しさを見ることが出来ます。 春の始まりを想わせるかのような地色に染められた絹布…、花器にすっと活けられたミモザ…、優し気ではんなりとして…、 地色を一つとってみても…、何気ないけれど、心を打つ、見事な染色です。 手仕事を極めた友禅の地色はたとえそれが淡い単彩であったとしてもそこに薄平たい印象は一切感じられません。 何層にも幾重にも染め色を引き重ねてこそ初めて浮かび上がる「重みのある淡さ」「質感のある淡彩」が生まれるのです。 友禅に力量がなければ、それはただ単に「薄い色」というだけでしかありません。 染色家自らの「目」が美しいと感じ、気が籠められた染めにのみ、時を経て見た時も「色褪せない魅力」が存在するのです。
※TPOですが、紬織物に適うのはもちろんなのですが、その他、御召織物/友禅小紋/江戸小紋などに御使い頂けるかと思います。 お色目は微かにうすたまご色みを帯びた淡い薄桜色です。 なんとも魅力的なお色目です。
商品番号 |
KWK-TGU-557 |
商品名 |
絞り染め九寸名古屋帯/小野順子作品 ミモザ |
品質 |
絹100% |
価格 |
¥276,000(帯地のみ仕立て無し/税込) ¥287,500(芯仕立て上げ税込) ※一級和裁士による手縫い。 ※お仕立てに要する日数はご注文確定後 約2週間~20日戴いております。 |
巾/ 長さ |
お仕立て上がりの際のサイズは帯巾・八寸~八寸二分程。/ 長さは九尺八寸程。多少の変更は出来ますのでお尋ねくださいませ。 |
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