水流の「季・とき」折々・・・
「季・とき」折々・・・ 2009年 06月30日(火)

□浴衣仕立と単衣仕立
いよいよ日々の暑さも夏らしいものとなり、弊店が店を構える名古屋では気温が30度を超えることも珍しくありません。 そのせいでしょうか、このところ、浴衣に関するご質問を戴くことが多くなって参りました。 今回は 「採寸の仕方」について少しお話をしよう考えておりましたが、予定を変更して「浴衣と夏着物」について少しお話したいと思います。 中でもとりわけ多くご質問を戴く 「絞りの浴衣ですが、夏の着物として着られますか?…」 「浴衣と夏着物として着られる浴衣は何が違うのですか?」 について。 あと、少し趣旨は異なりますが「藍染め浴衣は色止めをしないとダメですか?… 」 などについてもお話させて頂こうかと思います。
まず。。。 「絞りの浴衣ですが、夏の着物として着られますか?…」と言うお問合わせについてですが。。。 とても適当な括り方をさせて頂くならば、絞りの浴衣(※一部を除く)とコーマ地の注染浴衣は夏着物としてお召し戴くのはちょっと無理があるように思います。 これらの浴衣は単衣着物仕立をしてもやはり浴衣以上には見えにくいのですね。 しかし…と言うことは絞りやコーマ地の浴衣は視点を変えれば最も浴衣らしい浴衣と言えるのかも知れません。 本来、浴衣は日が落ちてから着るお召しもので、お昼に街中を歩くことを想定したものではないのです。 いまでも老舗の呉服屋さんなんかには 「浴衣は浴衣!他の着方は認めません!」なんて言われる方も居られるようです。 弊店は創業四半世紀 呉服屋さんとしては 新興ではありませんが、25年程度ではまだまだ老舗とは呼べるほどではありません。 ま、会社組織に例えれば課長さんクラスでしょうか。 そんな弊店ですので 上述のような老舗の呉服屋さんのような厳格な規律は持ち合わせておらず、考え方も良く言えば柔軟?… と言うか 何につけ「昔から決まっとる」とする英国紳士のような頑固な規律が欠落しているのですね。 そう、話が逸れますが、英国紳士は少々の雨ならば傘なんて差さないそうです。 その訳を尋ねてみると 「昔からそう決まってるから」 だそうです。 なるほど… 傘を差さない理由は昔から決まってるからなんですね… … わかりやすいです。。。 ま、そうした頑固な考え方はなく、ある程度現代に即応した考え方です。
つまり弊店では そうした浴衣以外 たとえば綿紅梅や綿絽 奥州小紋など等の浴衣は夏着物としてもどうぞ、と対応しております。 その場合、お仕立料金が少しだけ割高にはなりますが 衿は広衿として頂き、仕立ても浴衣仕立ではなく、単衣着物仕立てとして頂くようお奨めしています。 では、「浴衣仕立」と「単衣着物仕立」の違いはと言いますと。。。 簡単に言ってしまえば「単衣仕立」の方が「浴衣仕立」より丁寧な仕立て方ということになります。。。 ……「そんなこと当たり前でしょ!」とお叱りを受ける前に私の生半可な知識にてご説明申し上げます。
まず、背縫いの始末ですが浴衣の場合は二度縫いです。 単衣仕立ては、背伏せを付けます。更に後揚げより下に居敷き当てを付けますが、この居敷き当て、広巾の生地をお奨めします。 脇、衽の縫込みは、浴衣は耳ぐけ、 単衣は耳ぐけにすることはなく、三つ折りくけにします。 単衣の脇は二度縫いして縫込みを開いて前後両側に倒して三つ折りくけするやり方もありますが、前身頃だけに倒して三つ折りくけでも構いません。
あと、襟型ですが、浴衣は大抵の場合バチ衿でお仕立てします。 掛け衿は先に共衿に付けてから衿付けをします。 単衣仕立ての場合あくまでも好みによるところですが、広衿仕立てが多く 掛け衿は共衿を付けた後でくけ付けることになります。 裏衿は、普通は絽の裏衿布を使いますが、あまり透け感のない生地でしたら胴裏の端切れを使われても良いと思います。 と、概ねこんなところでしょうか? …… で、こんなこと聞いても解りにくいですよね。。。 やはり、簡単に言えば「単衣仕立」の方が「浴衣仕立」より丁寧な仕立て方ということになります… (これ、ふざけて言っているのではありません…)
あと藍染めの色止めですが。。。 これは “藍染めでしたら”浴衣であれ、着物であれ「色止め」は必要不可欠です。 “藍染めでしたら”、とわざわざ注釈をしましたのは 藍色と言う青い化学染料で染めたものと藍染めは同じような色に見えたとしてもその性質は全く異なるものだからです。 (※藍染めかそうでないかを確かめるには 糸端が有ればそれを皿の上で燃やしてみて下さい。 燃えカスに藍の染料が溶け出し、皿が青く染まります・・・。) 藍染めはその染料の性質から 他の染料と大きく異なる点があります。
また、藍は自然界の中で唯一青く発色する天然染料なんですね。 化学式をここで説明することは出来ませんが (場所を変えても出来ません…) 至極簡単な言い方をさせて頂くならば、藍染めとインディゴはまったく別なものですし、藍は天然染料の中でも色落ちし易い染料でもあるのです。 色止めをしたからと言って100%色落ちが止まる訳ではありません。 ただ、するのとしないのとではやはり明らかに違う訳です。 浴衣の下着に色移りがしたり 帯に色移りがしたり と後々余計な悩みが増えることになりますので 色止めは必ずしてください。 藍はその「色落ちを楽しむ」なんて言われ方をすることも有りますし、確かにそれはそれで一理ないとは言えません。 暖簾や法被 Tシャツやデニムのパンツなどは色落ちを楽しむものかと思います。 が、やはりユカタや着物となると 色落ちは避けたいものです。
正藍染に代表される草木染の着物にも変色/退色/色落ちのリスクは常に付いてまわります。 これも天然染料である「正藍」「草木染料」の着物であると言う、化学染料の着物からは決して得ることの出来ない魅力と背中合わせの宿命です。唯、それらを思っても着てみたい魅力が正藍にはあるんですね。また、管理方法は染料/染色技法により、異なりますが、基本的に、自分で何かをしないこと、が一番かと思います。無責任な言い方かも知れませんが・・・ ただ、正藍をどうしてもご自宅で洗いたい、と言う方には 「お酢」を垂らした「酢水」で洗うことをお奨めします。 お酢と水を 1対3程度の割合にて作りますが、 浴衣なんかは 1対5くらいの薄さでも構いません。 絶対に家で洗うんだ! なんて方はお試しください。 あくまでもお奨めはしませんが…
こちら 女帝の好きな浴衣です。 半衿を付けて夏着物として着たいとのことです。 意匠/designなんかも夏着物として十分着られるものかと思いますし、生地もとても表情があるもので、麻の帯なんかと適わせると とても素敵な夏着物となります。 また、女帝曰く、「見場が良いから何でも着こなすから」欲しいのだそうです。 あくまでも女帝本人が言っているだけのことです。。。 自薦、他薦で言えば確実に自薦です。 言わば、寝言たわ言の一種なんでしょうね…
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